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2014/05/02

<トピックス>日韓産業技術協力の20年㊦                                                                  日韓産業技術協力財団 山崎 弘 常務理事

  • 日韓産業技術協力の20年㊦

◆モノづくり体制再構築を・人材育成へ投資を急げ◆

 今回はこれらの事業を通じて韓国の中小企業の問題点について述べる。最近、韓国の中小企業はグローバル企業に成長しつつあり、部品素材分野でも対日輸入依存度が減ってきているが、依然として問題点を抱えている。その内容は図3に示すごとく、5つにまとめられる。

 ①結果・成果を即、求める 経営者も従業員も試作段階からプロセスを軽んじる風潮があり、結果を急ぐ。プロセスすなわち工程は宝の山であるが、試行錯誤も含めて消極的である。

 ②モノづくりの基本がなおざり 三現主義、3定5Sの不徹底、生産管理、品質管理の知識はあるものの現場で生かされていない。管理技術、固有技術の研ぎ澄まし不足。

 ③技術・情報の共有化の遅れ、組織解決力の不足 生産に必要とする技術・情報が社内一元化、共有化されておらず、個人が所有。組織による解決力が不足。小集団活動など組織の活性化推進が必要。

 ④人材育成、R&Dへの投資不足 人材から人財育成へ社内社外の研修教育が不十分、また部品素材の研究の基礎であるR&Dの人材、設備への投資が不十分である。

 ⑤日韓両国の中小企業連携、協業の遅れ 日韓の企業が連携して第三国への進出が盛んになってきた。中小企業において、両国の商談会は盛況であるが、協業進出事例が少ない。企業相互の生産力・技術力を活かして、連携していくビジネスチャンスが到来している。特に2015年は日韓国交正常化50周年の年とともに、ASEAN共同体(AEC)が発足する。6億人の市場が誕生し、大きなビジネスチャンスを迎えている。

 次に先の問題点を踏まえて、韓国中小企業への3つの提案をしたい。

 ①モノづくり体制の再構築を急げ 本社、工場、協力会社が一体となってプロセスを洗い直し、生産工程をデータ(数値)で表現、3ム(ムリ・ムダ・ムラ)を除去する。小集団活動の定着による組織の活性化向上を図る。

 ②人材(人財)の育成を急げ 生産もR&Dも結局は人材が基である。社内外の研修教育の場を活用して、人材育成に投資すること。韓国企業には積極的で粘り強い優秀な人材が多い。育成による効果は大きい。

 ③日韓中小の企業連携による第三国展開事業の深耕 日本企業の技術、韓国企業の市場への迅速・機動性を生かして、日韓の中小企業が補完・連携しながら、到来するビジネスチャンスに早く協業による成功事例を作ること。

 以上、財団事業を通じて韓国の中小企業の実態について述べたが、最近の韓国の中小企業は大企業に劣らず、グローバル企業に成長しており、日本企業との協業を図り、相乗効果による大きな発展が期待できる。

 受診された企業の中には 舶用機器・熱交換器メーカーのD社、鉄道車両メーカーのW社、金型・携帯電話メーカーのJ社、自動車部品メーカーのK社等の様に経営規模を拡大し、日本及び海外へ展開を図り、発展を遂げている企業が出ている。事業を通じて訪問した韓国企業は400社を超え、多くの韓国企業の経営者、社員、多岐にわたる現場に接することができたことは 今後、事業を進める上で大きな財産である。

 最後に、日韓両財団の連携のもとに、事業を円滑に遂行することができたが、韓日産業技術協力財団をはじめ多くの日本及び韓国の企業、日本の専門家のご支援、ご協力の賜物と感謝したい。