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2014/02/14

<トピックス>私の日韓経済比較論 第37回 韓国経済とアルゼンチン・ショック                                                    大東文化大学 高安 雄一 教授

  • 大東文化大学 高安 雄一 教授

    たかやす・ゆういち 1966年広島県生まれ。大東文化大学経済学部社会経済学科教授。90年一橋大学商学部卒、同年経済企画庁入庁、00年在大韓民国日本国大使館二等書記官、00~02年同一等書記官。内閣府男女共同参画局などを経て、07~10年筑波大学システム情報工学研究科准教授。2013年より教授。

  • 私の日韓経済比較論 第37回 韓国経済とアルゼンチン・ショック

    アルゼンチン・ショックの影響が懸念された1月27日の外換銀行のディーリングルーム

◆米国の量的緩和縮小の軟着陸を◆

 2014年の経済成長見通しは、政府が3・9%、韓国開発研究院(KDI)が3・7%、韓国銀行が3・8%である。2012年の実質成長率が2・0%、2013年が2・8%であったので、回復基調が鮮明になると見通されていることがわかる。

 3つの経済見通しの中で最新である、韓国銀行の「2014年経済見通し」から各需要項目別に動きを見てみよう。まず民間消費であるが、物価安定、就業者増加などの消費に影響する条件が改善することから、13年の1・9%増から14年には3・4%増となるとされている。次に設備投資であるが、グローバル経済危機からの回復、企業心理の改善を背景として、12年の1・9%減、13年の1・5%減から、6・4%増と大幅なプラスに転じることが見通されている。

 さらに輸出である。輸出の環境として最も重要なものは世界経済の動向であるが、先進国を中心に堅調な回復基調が見えるとされている。円安といったマイナスの影響はあるものの、輸出は13年の4・3%増から14年には7・2%増と、伸び率が高まることが見込まれている。

 ここまで見れば、文字通り景気の良い話であるのだが、当然リスク要因もある。KDIは14年に発生するかもしれないリスクとして、アメリカの量的緩和縮小によるマイナスの影響が予想以上に大きい場合、世界経済が萎縮する可能性を挙げている。そして、量的緩和縮小の影響が、財政が脆弱なユーロ地域、新興国の金融不安に結びついた場合、世界経済の回復基調が弱まるとしている。また特に新興国については、経済要件が脆弱な国々の急激な資本流出の可能性を排除できない点を指摘している。

 KDIの見通しは昨年の11月19日に公表されたものであるが、それから2カ月余り経った今年1月23日に新興国に分類されるアルゼンチンの通貨ペソが急落した。そしてやはり新興国であるトルコや南アフリカの通貨もアルゼンチンの動きを受けて急落した。アルゼンチン・ペソの急落は、アルゼンチンの通貨当局がペソを買い支えることが難しくなったと市場が判断したことによるとの見方が一般的である(アメリカの量的緩和縮小の動きが影響するとの見方も一部ある)。

 しかし、複数の新興国を巻き込んだアルゼンチン・ショックは、韓国経済をウオッチする者にとってもひやりとする出来事であった。

 しかしアルゼンチン・ショックは韓国にはマイナスの影響を与えていない。影響が懸念された初日である1月27日の韓国総合株価指数(KOSPI)こそ前日比(1月24日)で1・56%下落したものの、為替レートは対米ドルで0・3%のドル高に振れたに過ぎなかった。

 そして1月29日にはKOSPIも1月24日の水準を上回り、為替レートも24日よりウォン高となった。韓国は97年に通貨危機に陥って以降、構造改革を進めた結果、経済のファンダメンタルズが強固となり、市場でもこれが評価された結果とも言える。

 さてアルゼンチン・ショックは世界経済の減速にまでつながらないとの見方が一般的であり、このまま韓国経済には大きな影響を与えないと考えられる。ただしKDIが指摘したリスクが解消されたわけではない。アメリカは量的緩和を進めており、これが新興国経済に影響する可能性は否定できず、世界経済の成長鈍化につながる可能性もある。

 14年の韓国の成長率見通しは、世界経済の回復が前提であり、これが崩れれば外需はもとより内需も鈍化する。そうなれば、回復基調にある韓国経済は腰折れする。アルゼンチン・ショックでひやりとした韓国経済、回復が続くためには、アメリカの量的緩和縮小が軟着陸することが条件といえよう。