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2014/05/30

<トピックス>日韓経済人会議に参加して                                                     日韓経済協会 西村 和義 元専務理事

◆違いを乗り越え、再び信頼と尊敬の関係を◆

 去る5月14・15の両日、東京で開催の「第46回日韓韓日経済人会議」に参加した。今回の会議は、来年の「日韓国交正常化50周年」の記念事業として「21世紀をアジアの世紀に」「次の50年に向けた未来指向の日韓関係の構築」を主要テーマに、両国より経済人、政府、経済団体、シンクタンクなど300名を超える方々が参加した。

 私は、日韓経済協会の専務理事を担当したこともあり、また韓国で生まれ育ち、韓国を第二の故郷という思いもあって、極力参加してきた。両国では46年の間に、アジア金融危機など、幾多の困難な時期もあり、開催が危ぶまれた年もあったが、それを乗り越え、一度も途切れることなく継続されてきた日韓両国の経済人の努力に深い敬意を感じると共に、特に今回はこれまでの中で最も内容の濃い、熱心、率直、そして前向きな討議が行われたと高く評価している。

◆拡大する第三国への連携進出

 特に、これまで多くの韓国産業は日本との相互協力、切磋琢磨により力をつけ、今やある分野では日本を越え、お互いにライバル関係まで大きく発展しているが、世界市場で良き競争をしつつも、互いの強みを活かし、金融やリスクを分担する趣旨もあり、共に連携して第三国へ進出を拡大しようという強い空気を感じた。

 事実、既にここ数年、インドネシアやメキシコ、カナダのLNGプロジェクト、モロッコ、トルコ、ミャンマー、マレーシア等の火力発電所、インドの地下鉄など、主なものだけでも20数件の具体的な共同進出計画が進んでいることは、私も驚きと共に再認識し、素晴らしいことだと思う。

 日韓両国は価値観を共にする大切な隣国であり、両国国民、特に将来を担う若い世代の為にも、一日も早く信頼と尊敬と正常な関係を取り戻して欲しいと強く思う。

◆正常化への努力を急ごう

 では両国関係の正常化のために何を成すべきか。両国ともまだまだ努力できることは多いと思う。あえて私見を簡潔に述べれば、

 ①まず両国とも日韓の安定した協力関係が、双方にとっても、アジアにとっても極めて重要であり、国民にとっても利益になるという、強い信念を持ち、色々な場で努力すること。

 ②両国、特に日本の政治の安定と経済力の回復。国内外への戦略的な情報、広報の不断の努力が必要。

 ③両国指導者の大局観を持った関係が極めて重要。知恵を出して早期に何らかの首脳会談を実現し、冷静率直な話し合いの復活。

 ④非公式な人脈・チャンネルの再構築。かつて元国務総理の朴泰俊氏に表敬訪問の折に、しみじみと「いま韓日両国のパイプが詰まってしまっている。両国にとって大変不幸なことだ」と嘆いておられたのが印象的だった。両国を良く理解されていた同氏の急逝は、大変な損失である。

 ⑤政治家の不用意な発言、一方的な報道や評論は、対立を煽り、むしろ喜ぶ一部のメディアの餌食となる。留意が必要。

 ⑥特に日本における事実に基づく、偏らない冷静な近現代の歴史教育、韓国における、日本の過去への批判だけでなく、戦後の協力への役割も冷静に評価する空気も必要。

 ⑦国際人材の意識的育成。近年、相互の留学生の受入れ、派遣、共に激減傾向にあるのは大きな懸念事項。留学生・留学経験者を大切に活かす社会や企業の雰囲気を育てたい。

 ⑧政府間だけでなく、民間各層、各分野での相互交流と信頼醸成が重要。特に青少年の活発な交流を大切にしたい。

 「和すれば共に利し、争えば共に損なう」「過去は変えられないが、未来は変えることが出来る」。日韓の関係は鏡のようなもので、相手が嫌いのようだから、こちらも好きになれないという感情で、世論調査では極端な数字になっているようだが、実際はお互いを良く知り好意を持つたくさんの人々がおり、既に色々な形で活発な交流が進んでいるのは心強い。

 両国には共通な思想や文化がある。是非不信や誤解の殼から思い切って抜け出し、今一度違いを認め、違いを乗り越え、信頼と尊敬の関係を取り戻したいと強く思っている。