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2014/06/06

<トピックス>切手に描かれたソウル 第44回 「端午節」                                                   郵便学者 内藤 陽介 氏

  • 郵便学者 内藤 陽介 氏

    ないとう・ようすけ 1967年東京都生まれ。東京大学文学部卒業。日本文芸家協会会員、フジインターナショナルミント株式会社・顧問。切手等の郵便資料から国家や地域のあり方を読み解く「郵便学」を研究。

  • 切手に描かれたソウル 第44回 「端午節」

    申潤福「端午風情」の切手

◆朝鮮時代の女性の姿、生き生きと◆

 朝鮮半島の伝統的な風習では、旧暦5月5日の端午節は、田植えと種まきが終わる時期に山の神と地の神を祭り、秋の豊作を祈願する日で、ことしは6月2日がその日に当たった。

 端午節の伝統的な風習といえば、菖蒲湯で髪を洗い、女性はクネティギ(ブランコ)、男性はシルム(韓国相撲)が定番で、以前の本欄でも、シルムについては取り上げたことがある。

 これに対して、クネティギは、『春香伝』で主人公の李夢龍とヒロイン成春香の出会いの場面が有名なため、物語の舞台となった全羅北道の南原のイメージが強いが、1979年4月1日に発行された「韓国美術5000年」の切手に取り上げられた申潤福の「端午風情」(ただし、切手の表示は「端午節」)は、現在、ソウルの城北区にある澗松美術館の所蔵品なので、本欄でご紹介してもよかろう。

 申潤福(号は蕙園)は、1758年、父の申漢秤を含め、代々が朝鮮王朝の図画署画員という家に生まれた。潤福自身も画員として僉節制使(従三品)の地位にまでなったが、首都と近隣の両班や妓生の風俗、さらには男女の秘め事などをテーマにした風俗画を数多く描きすぎたことを咎められ、図画署を追われたといわれており、その没年などはわかっていない。


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