ここから本文です

2016/11/18

<トピックス>切手に見るソウルと韓国 第73回 14年仁川アジア大会                                                         郵便学者 内藤 陽介 氏

  • 切手に見るソウルと韓国 第73回 14年仁川アジア大会

    ないとう・ようすけ 1967年東京都生まれ。東京大学文学部卒業。日本文芸家協会会員、フジインターナショナルミント株式会社・顧問。切手等の郵便資料から国家や地域のあり方を読み解く「郵便学」を研究。

  • 切手に見るソウルと韓国 第73回 14年仁川アジア大会

    14年仁川アジア大会の記念切手

◆崔順実(チェ・スンシル)の娘が馬術競技出場、梨花女子大に「裏口入学」疑惑◆

 崔順実の国政介入問題で朴槿惠政権は危機的な状況に追い込まれているが、一連の混乱で、最も韓国社会の怒りを買っている人物の一人として、崔順実の娘、鄭維羅を挙げる人も多いだろう。

 鄭維羅は1996年、鄭潤會(国会議員時代の朴槿惠の秘書室長で、崔順実の元夫)と崔順実の長女として生まれた。

 はじめ声楽家を志したものの、音楽の才に乏しかったため、乗馬に転向。清潭高等学校在学中の2014年、国内大会の韓国馬事会杯で4位の成績を収め、同年9~10月に仁川で開催されたアジア競技大会に馬場馬術競技団体戦の代表として出場し、韓国チームの金メダル獲得に貢献した。

 ちなみに、アジア競技大会の開催に先立ち、14年7月31日、韓国郵政は大会の周知を兼ねた記念切手を発行している。

 その図案は、大会マスコットでゴマフアザラシ(韓国領内では黄海上の白翎島・頭武津に生息)のピチュオン、パラメ、チュムロの3匹を描く切手と、大会競技から、ボーリング、スカッシュ、新体操、レスリング、クリケットを描く5種、計6種の連刷形式で発行された。歴史にifは禁物だが、16年1月に設立されたKスポーツ財団を通じて崔順実がスポーツ行政に介入するようになった後であれば、鄭維羅の出場した馬術競技も切手の題材に取り上げられていたかもしれない。

 なお、仁川のアジア競技大会は、低予算で斬新な大会運営を目指すとして、2010年に中国・廣州で開催された前回大会の約10分の1、20億㌦(当時のレートで約2130億円)という低予算で行われたが、低コスト運営ゆえの不手際(例えば、選手の食事は量が少なく、賞味期限切れの弁当が支給されることもあったという)やバドミントン会場での停電や不可解な空調操作等の問題も少なからずあり、評判は芳しいものではなかった。

 さて、団体競技の一員とはいえ、アジア大会の金メダリストとなった鄭維羅だったが、清潭高等学校3年次の出席日数は卒業要件を満たしておらず、通常であれば、留年するところであった。しかし、これに対して、崔順実が圧力をかけ、韓国乗馬協会の発行する公文書により〝公休〟扱いの日数を水増しすることで、なんとか卒業した。

 さらに、高等学校卒業後、鄭維羅は名門の梨花女子大学校に進学するが、当時の同大のスポーツ推薦入試の出願資格は「3年以内の国際的または、全国規模の大会において個人種目3位以内入賞者」となっており、アジア大会の団体戦で優勝した彼女には出願資格がなかったにもかかわらず、これまた母親の圧力により、〝特例〟として、彼女のみが受験する乗馬の一芸入試が行われ(ちなみに、学力テストの点数は受験者中最下位だったと報じられている)、入学が認められた。

 日本よりもはるかに過酷な学歴社会とされる韓国で、名門大学への〝裏口入学〟は、それだけで十分にバッシングの対象となりうる。

 このため、〝裏口入学〟の疑惑が取り沙汰されると、鄭維羅は突如大学を休学してドイツに出国するが、彼女のドイツでの滞在費や乗馬の練習費用などとして、日本円で3億円以上が、大統領の口添えを得て、財閥企業から強制的に資金を集めて設立されたスポーツ支援財団、Kスポーツ財団の資金から流用されていたとの疑いがもたれている。


つづきは本紙へ