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2016/01/29

<トピックス>私の日韓経済比較論 第59回 16年経済見通し                                                    大東文化大学 高安 雄一 教授

  • 大東文化大学 高安 雄一 教授

    たかやす・ゆういち 1966年広島県生まれ。大東文化大学経済学部社会経済学科教授。90年一橋大学商学部卒、同年経済企画庁入庁、00年在大韓民国日本国大使館二等書記官、00~02年同一等書記官。内閣府男女共同参画局などを経て、07~10年筑波大学システム情報工学研究科准教授。

◆中国経済減退で輸出の不振続く、大胆で裁量的な財政政策を◆

 昨年末に企画財政部より「2016年経済見通し」が公表された。これによれば15年の実質経済成長率は2・7%であり(実績見込値)、16年の見通し値は3・1%である。3・1%といえば日本から見れば夢のように高い数値である。

 しかし、韓国の潜在成長率は最近低下基調にあるといっても3・5%程度なので、今年も望ましい成長率に達さないことが予想されているわけである。

 最大の要因は輸出の不振である。このところアメリカ経済は好調に推移している。10年前の韓国の経済構造であれば、アメリカ経済が好調であれば韓国の輸出も増加して成長率が高まっていたはずである。しかし中国経済が不振であり、韓国の輸出、ひいては成長率の足を引っ張っている。

 2000年代に入ってから韓国の輸出先として中国が急速に重みを増し、2000年代中盤にはアメリカを抜いて第一の輸出相手国となった。ただし輸出額が大きいからといって、その国の経済が影響するとは限らない。

 中国の場合は中間財を輸入し、これを国内で加工して最終需要国に輸出することが少なくない。このような場合は、中国への輸出が多くても最終需要先はアメリカなど他の国であり、韓国の輸出に影響するのは中国ではなくアメリカである。

 通常の貿易統計では輸出の最終需要先を把握できないが、OECDとWTOが共同して作成・公表している付加価値ベースの貿易額(Trade in Value Added:TiVA)では可能である。そして、付加価値ベースで見た最大の輸出先の経済こそが、その国の輸出に大きな影響を与える。

 2000年代中盤以降、普通の貿易統計から見れば、中国が最大の輸出国となったが、付加価値ベースで見れば、貿易額に占めるウエートはそれほど大きくはなかった。つまり2000年代においても、韓国にとってアメリカ経済が最重要であることには変わりがなかった。


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