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2016/01/22

<トピックス>切手に見るソウルと韓国 第63回 申年の年賀状と切手                                                         郵便学者 内藤 陽介 氏

  • 郵便学者 内藤 陽介 氏

    ないとう・ようすけ 1967年東京都生まれ。東京大学文学部卒業。日本文芸家協会会員、フジインターナショナルミント株式会社・顧問。切手等の郵便資料から国家や地域のあり方を読み解く「郵便学」を研究。

  • 切手に見るソウルと韓国 第63回 申年の年賀状と切手

    韓国郵政発行の年賀状

◆植物相適さず、野生の猿が生息しない朝鮮半島◆

 いまさら「おめでとうございます」とは言いづらい日付になってしまったが、ともかくも年が明けてから最初の本連載ということで、今回は干支にちなんでサルの話。

 韓国在住の友人から頂戴した年賀状は、昨年末に発行されたグリーティング用の封筒に、2016年用の年賀切手が貼られていた。

 封筒の印面は、モミの木を背景に雪の結晶を掲げるサルが、切手にはセーターを着て木の枝に毛糸の靴下を吊るすサルが、それぞれ描かれている。

 韓国で正月といえば、基本的には旧正月のソルラルだし、日本と比べてクリスチャンの人口比も桁違いに多いから、前年末に発行する〝年賀切手〟が、クリスマス・カードを送る場合にも兼用できるようなデザインになっているのも自然なことと言えよう。

 なお、年賀切手には額面数字が入っておらず、〝永遠郵票/国内規格25㌘〟を意味するハングルが入っている。これは、この切手が、今後、料金の値上げがあっても、未来永劫、25㌘までの国内宛定型書状料金用として使うことができるというものだ。

 雪中のサルというと、日本では、温泉につかっているニホンザルを連想する人が多いだろうが、おそらく、韓国人にはそういう発想はないのではないかと思う。

 意外に思われるかもしれないが、現在のニホンザルの祖先は、30~50万年前の氷河期に朝鮮半島経由で日本列島に渡ってきたと考えられているにもかかわらず、現在の朝鮮半島には野生の猿は生息していない。

 サル目の動物は、そのほとんどが熱帯に生息しており、青森県の下北半島に住むニホンザルは〝北限のサル〟として有名だが、単純に緯度の比較でいうと、下北半島は平壌よりもさらに北に位置している。

 したがって、北緯38度線以南の韓国領内にサルが棲息していても不思議はなさそうなモノだが、そうなっていないのは、植物相の違いが大きな要因とされている。


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