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2017/05/12

<トピックス>韓国労働社会の二極化 第23回 韓国の労使関係⑥「労働争議」                                                    駿河台大学 法学部 朴 昌明 教授

  • 駿河台大学 法学部 朴 昌明 教授

    パク・チャンミョン 1972年兵庫県姫路市生まれ。関西学院大学商学部卒。関西学院大学大学院商学研究科博士課程前期課程修了。延世大学大学院経済学科博士課程修了。現在、駿河台大学法学部教授。専攻分野は社会政策・労働経済論・労務管理論。主な著作に「韓国の企業社会と労使関係」など。

  • 韓国労働社会の二極化 第23回 韓国の労使関係⑥「労働争議」

◆困難な非正規労働者の組合設立◆

 韓国の労使関係といえば、まずストライキを連想することが多いであろう。1987年に民主化運動が高揚し、労働組合が多く設立されたことを契機に労働争議が急増した。

 また、1997年12月に通貨危機が発生してから、雇用問題が深刻化していくなかで労働争議が多発した。今年は民主化運動が高揚してから30年、通貨危機(1997年末)が発生してから20年にあたるが、労働争議をめぐる問題は解決の道筋が見えない状況にある。

 表は、1996年から2016年にかけての労働争議発生件数と労働損失日数を示す統計である。労働争議発生件数は通貨危機が発生した1997年から2000年代前半にかけて増加傾向が見られ、2004年には462件にまで達した。2004年以降から労働争議発生件数は概ね減少傾向にあったものの、朴槿惠政権が発足した2013年からは発生件数が増加し、2014年以降は毎年100件以上になっている。16年には大企業における労働争議が増加した。

 韓国統計庁のKOSISによると、従業員1000人以上の事業場における労働争議発生件数は15年(26件)から16年(47件)にかけて倍近く増加している。大企業におけるストの増加等により、16年の労働損失日数(2035千日)は通貨危機以降最も高い数値を記録した。

 16年に労働損失日数が急増したのは、鉄道・金融産業・自動車などの大規模事業場において労働争議が発生したためである。労働争議の参加者数が多くなったり、労働争議の発生期間が長くなったりするほど、労働損失日数は増加する。したがって、16年は労働争議が韓国経済に深刻な打撃を与えた一年であることがわかる。

 通貨危機以降に発生した労働争議の背景としては雇用不安が挙げられる。通貨危機の発生直後、労働組合は組合員の雇用を守るために譲歩交渉を行ったが成果が得られず、多くの企業で大規模なリストラが行われた。そのため、組合が再び強硬路線に転じた結果、1998年から2000年にかけて労働争議が増加した。

 2000年代前半においては雇用問題が慢性化した時期であり、組合側は雇用維持のための制度を労働協約に反映させることを強く要求したが、使用者側と激しく対立し労働争議が多発した。

 李明博政権末期にあたる12年においては整理解雇の撤回などを組合が要求した大企業の労働争議が混迷化し社会問題となった。そして16年には公共部門や金融部門で成果年俸制の導入をめぐり労働争議が発生した。朴槿惠政権が推進を図った成果年俸制は低成果者に対する解雇条項が含まれており、政府との関係が強い公共・金融部門において労使が激しく対立したのである。

 一方、賃金問題による労働争議も根強く存在する。代表的な事例は現代自動車である。インターネット聯合ニュース(16年7月14日記事)によると、1987年から現代自動車でストライキが発生しなかった年は1994年、2009年、2010年、2011年のみである。

 現代自動車の労働者の年俸は韓国企業のなかでも屈指の高水準である。インターネット朝鮮日報(16年7月25日記事)によると、現代自動車の平均年俸は9700万㌆であり、中小企業正規職の平均賃金(3363万㌆)の3倍弱に相当する。

 このような高賃金にもかかわらず、労働争議の主たる争点は賃金に関わる問題が多い。現代自動車でストが発生すると、韓国経済に影響を及ぼし得るほど経済損失の規模は大きい。そのため現代自動車労組に対する韓国社会の視線は厳しく、「貴族労組」との批判を受けることが多い。

 非正規労働者の組合による労働争議が社会問題化する事例も増えている。様々な産業で非正規職による労働争議が発生したが、社会的に強い注目を浴びた事例としてはイーランドや現代自動車などが挙げられる。


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