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2017/09/01

<トピックス>韓国労働社会の二極化 第27回 文政権の労働政策の展望④「労働基本権」                                                   駿河台大学 法学部 朴 昌明 教授

  • 駿河台大学 法学部 朴 昌明 教授

    パク・チャンミョン 1972年兵庫県姫路市生まれ。関西学院大学商学部卒。関西学院大学大学院商学研究科博士課程前期課程修了。延世大学大学院経済学科博士課程修了。現在、駿河台大学法学部教授。専攻分野は社会政策・労働経済論・労務管理論。主な著作に「韓国の企業社会と労使関係」など。

◆労使関係の民主化完成させ、労使協力推進を◆

 韓国は軍事政権期に政府が労働基本権を厳しく制約してきたことで「人権後進国」との批判を受け続けてきた。民主化が進展するなかで労働関係法の問題条項が削除されるなど改善が見られたが、現在でも労働基本権の制約をめぐり韓国はILOから批判を受けている。それは韓国がILOの「結社の自由及び団結権保護条約」(第87号)と「団結権及び団体交渉権保護条約」(第98号)を批准していない点についてである。

 今回のコラムではこの問題に関連して労働基本権に関する文在寅政権の政策について検討を行う。

 「親労働」を掲げている文在寅政権は、労働基本権の拡大についても前向きに検討する姿勢を示している。国政企画諮問委員会が今年7月に発表した「文在寅政府国政運営5カ年計画」では、労使関係分野における法整備に関連して、ILOの第87号条約と第98号条約の批准を推進すると掲げられている。ところが、ILO第87号・第98号条約の批准をめぐり韓国社会で激しい意見の対立が存在する。それは主に以下の3つに関わるイシューである。

 ①公務員・教員労組の合法化

 「公務員の労働組合設立及び運営に関する法律」(公務員労組法)と「教員の労働組合設立及び運営等に関する法律」(教員労組法)では組合員の資格が得られるのは現職の公務員・教員であり、解職者は原則的に組合員の資格が得られない。そのため、全国教職員労働組合(全教組)と全国公務員労働組合(全公労)は、解職者を組合員に含めているために、労働組合としての法的地位を喪失している。

 しかし、ILO第87号・第98号条約が批准されれば、解職者にも組合員資格が付与される方向に労働関係法が改定され、全教組と全公労が再び合法化されることになる。全教組と全公労は左派色が強く闘争志向的であるため、保守系の政党やマスコミから反対の声が強く見られる。

 ②特殊雇用労働者への労働基本権付与

 特殊雇用労働者とは、契約上は個人事業者であっても、発注者から業務上の指揮・命令を受けている点で労働者の性格を有しているにも関わらず、労働関係法の適用が受けられないことが問題視されてきた(詳細は本紙2015年12月4日付5面記事を参照)。

 国家人権委員会は、今年5月29日に雇用労働部長官に対し、特殊雇用労働者の労働三権を保障するよう勧告した(国家人権委員会報道資料、2017年5月29日付)。これまで特殊雇用労働者による組合設立をめぐり労使紛争が度々見られてきたが、ILO第87号・第98号条約が批准されると、特殊雇用労働者に対する労働基本権が付与される方向に進むことが予想される。

 ③合法ストに対する損害賠償・仮差し押さえの防止

 過去の政権においては、労働組合がストを起こすと、「法と原則」の論理に則り、企業側が組合に対して損害賠償・仮差し押さえを行使するケースがよく見られた。これは組合が違法ストを行う際の経営側の防衛策として有効に機能したが、組合を弾圧するための手段として乱用されることもあった。


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