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2017/11/03

<トピックス>韓国労働社会の二極化 第29回 長時間労働①「労働時間統計」                                                   駿河台大学 法学部 朴 昌明 教授

  • 駿河台大学 法学部 朴 昌明 教授

    パク・チャンミョン 1972年兵庫県姫路市生まれ。関西学院大学商学部卒。関西学院大学大学院商学研究科博士課程前期課程修了。延世大学大学院経済学科博士課程修了。現在、駿河台大学法学部教授。専攻分野は社会政策・労働経済論・労務管理論。主な著作に「韓国の企業社会と労使関係」など。

◆休日出勤、サービス産業改善が急務◆

 現在日本では、違法残業をめぐる裁判や時間外労働の上限規制をめぐる労使間の議論などにも見られるように、長時間労働をめぐる問題が社会的な注目を強く受けている。長時間労働が深刻なのは韓国も同様である。

 韓国の労働時間は日本よりも長く、過労死・過労自殺の問題も発生している。今回から数回にわたり韓国の長時間労働に関する現状や問題点などを検討していく。今回のコラムでは韓国の労働時間について統計資料を用いながら実態把握を試みる。

 韓国の労働時間は先進諸国の中で最長水準である。表1(表は本紙へ)は、OECD統計による2016年における雇用者一人当たりの平均年間総実労働時間である。韓国は2052時間となっており、日本をはじめとする他の先進諸国よりもはるかに長い水準であり、韓国の労働時間はOECD加盟国のなかではメキシコに次ぎ2番目に長い。

 表2は、ILO統計による長時間労働者の割合である。ヨーロッパの先進諸国の場合、就業者のうち長時間労働者(週48時間超)が占める割合は5~10%程度であるのに対し、日本は20・4%とはるかに高い割合になっているが、韓国は27・2%と日本よりも7㌽近く上回っている。

 韓国と日本の労働時間統計を見る際に注意しなければならないのは、サービス労働が労働時間に含まれていない点である。サービス労働は違法残業であることから政府の統計調査において労働時間に算入されない。そのため、日本と韓国の政府公式統計では実際の労働時間や長時間労働者の割合が過小計上されている可能性が高く、日韓の長時間労働問題は政府公式統計の数値以上に深刻であるものと考えられる。

 韓国ではどのような産業、職種、雇用形態で労働時間が長いのであろうか?

 韓国労働部の「雇用形態別勤労実態調査」による2016年の平均月労働時間は以下のとおりである。まず産業別では、鉱業(194・0時間)製造業(193・3時間)、不動産業及び賃貸業(193・2時間)などが長い。次に職種別では、装置・機械操作及び組立従事者(200・5時間)、技能員及び関連技能従事者(191・4時間)、単純労務従事者(190・5時間)などの職種で長い。さらに雇用形態別では、正規職(184・7時間)だけでなく、期間制労働者(183・9時間)、派遣・請負労働者(185・5時間)などフルタイムで働く非正規職の労働時間も長い。

 長時間労働の原因として残業の長さや休日出勤の多さが挙げられる。韓国労働研究院が韓国労働部からの委託を受けて実施した「勤労時間運用実態調査」(2016年)による調査結果を紹介する。

 第一に、平日の延長労働については以下のとおりである。調査対象の事業体のうち平日に延長労働を実施している事業体の割合は43・5%であり、産業別では


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