ここから本文です

2017/02/24

<トピックス>私の日韓経済比較論 第68回 通貨スワップ                                                   大東文化大学 高安 雄一 教授

  • 大東文化大学 高安 雄一 教授

    たかやす・ゆういち 1966年広島県生まれ。大東文化大学経済学部社会経済学科教授。90年一橋大学商学部卒、同年経済企画庁入庁、00年在大韓民国日本国大使館二等書記官、00~02年同一等書記官。内閣府男女共同参画局などを経て、07~10年筑波大学システム情報工学研究科准教授。

◆外貨準備高の2割を有価証券から現金保有に◆

 2月8日に韓国銀行はオーストラリア中央銀行と、ウォンとオーストラリアドルを交換する通貨スワップ取極を3年間延長し、規模を2倍の100億オーストラリアドル(77億㌦に相当)に拡大した。韓国経済には現在のところ差し迫った火種はない。

 サムスン電子の李在鎔副会長が逮捕されたが、会社自体は半導体メモリー価格の上昇を背景に業績は好調であり、マクロ経済や金融市場に与える影響はないといってよい。

 ただし韓国経済に火種がなくても欧米の金融市場が不安定になれば、韓国に流入している外国資本が逆流し、ウォンの急落を招く可能性はある。

 欧米の金融市場は現在のところは安定しているが、中国や欧州発の金融危機の可能性は払拭できていない。欧米の金融市場が不安定になり、韓国から大量の資本流出が起きた場合の備えが二国間通貨スワップである。

 急激な資本流失の備えとしてはIMFやCMIの支援スキームがあるが、IMFの支援の条件として構造改革の履行など条件が付けられる。またCMIも一定以上の融資はIMFからの支援が前提となる。

 よってIMFやCMIの支援スキームの利用がためらわれるなか、外貨不足時の金融支援のスキームとして二国間の通貨スワップ取極が重要となっており、先のオーストラリアとの通貨スワップの規模拡大は韓国経済にとっては朗報である。

 しかし現在、韓国が締結している二国間通貨スワップ取極の規模を見ると中国のウエートが高い。

 若干数値は古いが、昨年8月末の状況を見ると、中国、マレーシア、アラブ首長国連邦、オーストラリア、インドネシアとの間で通貨スワップ取極を結んでいる。これらの規模を、昨年7月の為替レートで換算すれば合計で約760億㌦となる。そのうち中国が占める比率が70%を超えており、中国に偏っていることがわかる。

 今回、オーストラリアとの通貨スワップの規模拡大により少しはましになったが、中国へ偏っている構造には変化はない。

 韓国が外貨不足に陥った場合、中国から人民元を受け取ることは可能であるが、韓国が外貨不足を解消するためには、人民元をさらにドルに交換する必要がある。しかしハードカレンシー(国際決済通貨)ではない人民元を、大規模かつ迅速に外国為替市場でドルに交換することは現実的ではない。

 また中国発で欧米の金融市場が不安定となった場合は、人民元の相場が急落していることが考えられ、人民元を受け取る意味がなくなる。

 韓国の外貨準備高は16年末で3711億㌦と世界でも8番目に外貨準備を有している国である。よって外国資本が急激に流出しても、問題なくウォン急落を防ぐことができそうに見える。しかしこの大半は有価証券で保有されている。


つづきは本紙へ


バックナンバー

<トピックス>