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2017/03/31

<トピックス>私の日韓経済比較論 第68回 財閥改革の是非                                                   大東文化大学 高安 雄一 教授

  • 私の日韓経済比較論 第68回 財閥改革の是非

    たかやす・ゆういち 1966年広島県生まれ。大東文化大学経済学部社会経済学科教授。90年一橋大学商学部卒、同年経済企画庁入庁、00年在大韓民国日本国大使館二等書記官、00~02年同一等書記官。内閣府男女共同参画局などを経て、07~10年筑波大学システム情報工学研究科准教授。

◆経済への影響に配慮した政策を◆

 朴槿惠氏は弾劾訴追の結果、3月10日に大統領を罷免され、大統領選の投票日が5月9日に決まった。現在の最有力候補は前回の大統領選で朴前大統領に僅差で敗れた、「共に民主党」前代表の文在寅氏である。

 3月24日に韓国ギャラップが公表した3月第4週の世論調査では文在寅氏の支持率が31%と抜きんでている。前回の大統領選では財閥改革が重要な争点となり、文在寅氏は強力な財閥改革を公約に掲げて戦った。格差拡大に国民が不満を持つなか、格差は財閥への富の集中によって引き起こされているといった考えが根強い。前回の大統領選の時も財閥に対する風当たりが強かったが、今回の国民の怒りは前回より高まっており、文在寅氏は反財閥色を強め、国民の支持を取り付けると考えられる。

 支持率でトップを走る文在寅氏が大統領に当選した場合に予想される財閥に関係する政策について考えてみよう。

 そのひとつがオーナー支配を弱めるための規制強化である。韓国では財閥のオーナーが循環出資あるいは持株会社を通じて系列企業を支配するケースが多い。財閥の系列企業がお互いの株式を持ち合うことは禁止されているが、循環出資は既存のものについては禁止されていない。韓国の大財閥を見ると、サムスンや現代自動車は循環出資、LGやSKは持株会社によりオーナーが系列企業を支配している。文在寅氏は財閥の支配構造を崩すために、循環出資については全面禁止、持株会社についても認定条件を厳しくするとみられる。

 また文在寅氏は財閥に対する法人税率の実質的な引上げを行うと考えられる。韓国では企業の競争力を高めるため研究開発投資の一定比率を控除するなど多くの税額控除が導入されている。法人税率は利益が大きいほど高くなる累進制を採用しているが、税額控除は財閥企業に適用されることが多く、結果として財閥の実質的な税率が低くなっていることが指摘されている。

 文在寅氏は社会保障の拡充の財源を捻出するため、法人税の最高税率を引上げるとともに、財閥が主に利用する税額控除を廃止すると思われる。

 ちなみに支持率で文在寅氏に続くのが、同じく「共に民主党」に所属し忠清南道知事の安熙正氏、「国民の党」の前共同代表の安哲秀氏であるが、彼らの財閥に関する政策も若干の温度差はあれ厳しいものになると思われる。


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