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2018/08/31

<トピックス>私の日韓経済比較論 第82回 記録づくめの猛暑                                                  大東文化大学 高安 雄一 教授

  • 大東文化大学 高安 雄一 教授

    たかやす・ゆういち 1966年広島県生まれ。大東文化大学経済学部社会経済学科教授。90年一橋大学商学部卒、同年経済企画庁入庁、00年在大韓民国日本国大使館二等書記官、00~02年同一等書記官。内閣府男女共同参画局などを経て、07~10年筑波大学システム情報工学研究科准教授。

◆予備電力1000万㌔㍗維持し、8月を乗り切る◆

 今年の韓国の猛暑は記録づくめである。以下、気象庁の資料から今年の猛暑がいかにすごかったか確認してみよう。

 8月1日におけるソウルの最高気温は39・6度となり、111年前の1907年10月1日に気象観測が始まって以来の最高値を記録した。ちなみに以前の最高記録は1994年7月24日の38・4度であった。

 さらに全国の最高気温も更新された。洪川で8月1日に記録された41・0度は、これまでの最高値であった1942年8月1日に大邱で記録された40・0度を上回った。

 なお最高気温の平均が33度以上となると「暴暑」、午後6時1分から翌日午前9時までの最低気温が25度以上となると「熱帯夜」と呼ばれる。6月1日から8月16日までの間を見ると、今年は全国45カ所の暴暑日数の平均値が29・2日と1973年以降最も多く、1994年の27・5日、2016年の16・4日がこれに続く。ちなみに1973年以降の平均値は8・6日である。また熱帯夜については、1994年の16・6日が最高値で、今年が15・7日、2013年が13・4日と続き、平均値は4・4日である。

 さて、これだけの猛暑ともなると当然心配されるのが電力需給である。韓国では、2011年9月15日に5時間にもわたり全国規模で停電が発生した。これは、夏季の電力需要のピークが過ぎたと判断して23カ所の発電所の点検を開始したなか、想定外の残暑により電力需要が増加したことなどで起きた事態であった。

 しかしこの事態の根本的な要因は電気料金の安さにあり、政府が物価上昇を抑えるために電気料金の引き上げを抑制したことが背景にあった。

 電気料金が相対的に安くなれば、エネルギー源が電気にシフトするなど電力需要が増え、供給がこれに追いつかなければ電力需給が逼迫するのは当然である。

 ただし、2011年から現在までこの状況には改善が見られた。「第8次電力需給基本計画(2017~2031)」によれば、2012年に電気料金(名目:販売単価)が10・9%も引き上げられ、2013年に7・3%、2014年にも4・7%引き上げられた。これにより2012年から2016年までの電力消費量の年平均増加率は1・8%にとどまり、2007年から2011年までの5・5%より増加率が大幅に縮小した。一方、電力の供給能力は2011年末から2016年末の間に33%、年率にして5・9%増加した。

 このように電力需給の環境はかなり改善したが、今年の記録的な猛暑で大規模停電に陥る可能性はなかったのか見てみよう。産業資源部の資料によれば、7月16日から電力需要が急増し、この日の最大電力需要は8631万㌔㍗を記録して、2016年8月12日の夏季ピーク時の需要量を抜いた。

 しかし、


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