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2018/11/02

<トピックス>私の日韓経済比較論 第84回 改定韓米FTA                                                  大東文化大学 高安 雄一 教授

  • 大東文化大学 高安 雄一 教授

    たかやす・ゆういち 1966年広島県生まれ。大東文化大学経済学部社会経済学科教授。90年一橋大学商学部卒、同年経済企画庁入庁、00年在大韓民国日本国大使館二等書記官、00~02年同一等書記官。内閣府男女共同参画局などを経て、07~10年筑波大学システム情報工学研究科准教授。

◆両国ともWin-Winの結果に◆

 9月24日に改定韓米FTAが署名された。今回の改定については、トランプ政権の圧力に韓国が屈して譲歩したように報じられることがあるが、実際は韓国に実害が出るとは考えられない。

 韓国が譲歩したとされる自動車に関する合意事項を見てみよう。第一は貨物自動車の関税撤廃時期の延期である。12年に発効した韓米FTAでは、貨物自動車の元々の関税率である25%を、21年に撤廃することで合意した。しかしながら、今回の合意では、10年目の関税撤廃が20年延長、すなわち2041年まで延長されることとなった。

 韓国メーカーが実際に貨物自動車を輸出できる場合には、この延長によって韓国の自動車業界が実害を受ける。具体的にはピックアップトラックが輸出の候補となるが、韓国の自動車生産技術に鑑みると、関税が撤廃されたとしてもピックアップトラックを米国に輸出することは難しいと考えられる。

 韓国が強みを持たないピックアップトラックに力を割くよりも、自動運転などの最新技術にリソースを投入した方が韓国の自動車業界のためになり、当然のことながら自動車メーカーもそのように考えているだろう。よって貨物自動車の関税撤廃時期が延期されても韓国には実害はない。

 第二は自動車の安全基準の緩和拡大である。現行の韓米FTAでは、販売台数が2万5000台以内である自動車メーカーが生産し、米国から韓国に輸入された自動車については、韓国の安全基準を満たさなくてもよいこととされている。

 しかし改定後は、


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