ここから本文です

2018/06/15

<トピックス>切手に見るソウルと韓国 第89回 端午節(旧暦5月5日)                                                         郵便学者 内藤 陽介 氏

  • 郵便学者 内藤 陽介 氏

    ないとう・ようすけ 1967年東京都生まれ。東京大学文学部卒業。日本文芸家協会会員、フジインターナショナルミント株式会社・顧問。切手等の郵便資料から国家や地域のあり方を読み解く「郵便学」を研究。

  • 切手に見るソウルと韓国 第89回 端午節(旧暦5月5日)

    江陵端午祭の記念切手(02年)

◆ユネスコ世界無形文化遺産に指定された江陵端午祭◆

 今年の端午節(旧暦5月5日)は6月18日だ。

 朝鮮半島の伝統的な風習では、旧暦5月5日の端午節は、田植えと種まきが終わる時期に山の神と地の神を祭り、秋の豊作を祈願する日で、菖蒲湯で髪を洗い、女性はクネティギ(ブランコ)、男性はシルム(韓国相撲)を行うなど、韓国各地でさまざまな風習が行われている。

 中でも、今年2月の平昌冬季五輪の会場となった江陵の端午祭りは有名で、2002年には江原道の代表的な文化として〝わが故郷〟の切手に取り上げられたほか、その独創性と芸術性ゆえに2005年にユネスコの世界無形文化遺産に指定され、毎年、韓国内外から約100万人の観光客が訪れる一大イベントとなっている。

 江陵端午祭は陰暦4月から5月初めまでひと月あまりにかけて、江陵市を中心に嶺東地域で行われる韓国最大規模の伝統祝祭だが、中でも、江陵独特の祭礼として知られているのが官奴仮面劇である。

 官奴仮面劇は、江陵端午祭の主神である国師女城隍を祀った国師女城隍祠で奉納される演戯で江陵の歴史を記録した『臨瀛誌』によれば、「毎年陰暦4月15日に戸長と巫女が大関嶺に上がって神木で國師城隍神を迎えて奉安し、陰暦5月5日に(楽器演奏や踊りで神を迎える)グッや仮面劇などで神を喜ばせた」と記されているが、いつから始まったのかは定かではない。

 大韓帝国末期の1909年にはいったん廃止されたが、解放後、考証を得て復元され1967年1月16日に重要無形文化財第13号に指定され、現在に至っている。韓国の伝統的な仮面劇の中では、例外的に、無言劇であるのも大きな特色である。

 仮面劇はまず、2名のチャンジャマリ(妖精)が出てきて揺籃にほこりを立てながら、膨らんだ腹を突き出しながら歩き回り、観衆をからかったり、性的な踊りを踊ったりしながら、舞台を整える。

 次いで第2幕では、ヤンバンとソメカクシが両側から登場。ヤンバンは突き出た頭巾をかぶり、威厳のある態度で登場し、ソメカクシに求愛する。ソメカクシはおとなしい仮面に黄色いチョゴリと赤いチマで恥らいながら踊る。最初、彼女はヤンバンを拒むが、最後はヤンバンと恋に落ちる。

 第3幕では、恐ろしい模様の仮面をかぶったシシタクタギ2名が、舞台両側から豪放な刀踊りをしながら飛び出し、ヤンバンとソメカクシの愛に嫉妬し、二人を引き離す。

 第4幕では、ヤンバンから引き離されたソメカクシが、最初は拒みながらも、シシタクタギと踊らざるを得なくなる。これを見たヤンバンは嫉妬に駆られて激怒し、


つづきは本紙へ